あの日以来、私と彼の仲は急速に発展したように感じられた。 
なによりもそれ以前と決定的に違っていたのは、私たちの会話の話題に 
その手の下ネタが増えたこと。 
それは、人に言えない秘密を共有する者同士の連帯感ともいえるものかも知れなかった。 

自分と同じ女の子の下半身事情については、当然ながらある程度の知識はある。 
その上、その手の事に興味津々なお年頃。 
友達同士で喋っているのを聞いていて、その知識はどんどん増える一方だ。 
しかし、男の子の下半身事情については、実際のところはどうなのか知る由も無い。 

既に男の子と経験を済ませた子が自慢気に 
「〜なんだってー。」とか、「〜するのが気持ち良いんだってー。」とか 
言ったところで、女の子の自分の体で実証できないし確認のしようもない。 
かと言ってそんな事を男の子に直接聞く事なんて死んでも出来る訳が無い。 

そんな状態の中、あのような経験を持ち、躊躇いも無く下ネタまでを話すようになった彼は、 
私にとって貴重で唯一の情報収集元になっていた。 

「ね、やっぱりあの時みたいに手でするの?」 
「いつ頃覚えたの?」 
「一日何回ぐらいできる?」 
「精液出る時ってどんな感じなの?」 
「ほうけいって何?」 
など、興味はあったが誰にも聞けなかったことを盛んに彼にぶつける。 

結果、今まで持っていた知識がガセだったり、本当の事だったり様々だ。 
図らずも、男の子と経験済みと自慢気に言ってた子が、 
実は、何にも知らずにトンチンカンな事を喋っていた事実も発覚したり。 
とにかく実際の男の子のそれについては、彼からかなりの知識、情報を得ていた。 

そして、彼自身のプライベートな情報についても… 
…中学1年あたりからで…最高1日5回で……ずるむけ。ってやつ。………だとか… 

彼のほうも当然のように、女の子の下半身事情に興味があるようで色々聞いてくる。 
女の子でも興味があるのだから、男の子なら尚更興味があるんだろう。 
今まで下ネタの話題なんて、全く出さなかった彼だったのに、 
実はムッツリスケベさんだったみたい。 
…健康な男の子だったらエッチなのは仕方がないのかな? 

「生理になったら胸が大きくなる。ってホント?」 
「毛が生え始めたのっていつ頃?」 
「生理が初まったのっていつ?」 
「生理の前後って性欲が高まるってホント?」 
「処女膜あってもタンポンって入るの?」 
「レズっているの?」 

一般的な話の中に、所々私のプライベートな情報が混じってしまっていて、 
答えた後で恥ずかしくなる事もしばしば。 
しかし、女の子とそういう関係があれば普通に知ってそうな質問も多々ある事から 
彼は未だに未経験であろう事も知った。 
それより、よく判らない質問も混じってるけど…… 

…男の子がレズに興味があるなんて…… 
……まぁ、可愛い子同士のだったら綺麗かもしれないけど…レディコミなんかにもたまにあるし…… 

その日も、私と彼は放課後の教室にいた。 
ひとしきり世間や友人の話をした後、なんとなくまた話題がそういう方向に進んでいった。 

「ね、で夕べはしたの?」 
「してねーよ。夕べは早く寝たし。それにそう毎日はしないって。」 
「え?だって男の子はだいたい毎日するんでしょ?そう聞いたよ。」 
「しないって。そりゃ毎日するヤツもいるだろうけどさ。だいたいどこでそんな話聞いたんだよ。」 
「そっかー、毎日はしないんだー。」 

回数やペースは人それぞれって言うことで、女の子と特に変わらないらしい。 
まあ、好物だからといて毎日同じ物を食べるか?といったらそういうもんでもない。 
というのと同じかも。…ん?違うかな? 

「でさ、する時ってどんなこと思ってするの?なんか見ながら?」 
興味はおかずに移る。 

「そりゃ、アイドルのグラビアとか水着写真とか見ながらすることもあるけどな…それとヌード写真とか……」 
「ふーん。」 
「あとはまあ…想像だよな。この子を脱がしたいとか、脱いだとこ想像してとか。」 
そういう部分は違うなぁ。水着とか裸だったら基本的に男の子は誰だっていいみたいだ。 

…見るだけで出来るなんて簡単でいいな…男の子って。 
時間もあんまり掛からないし、ピュッって出したら終われるし。 

「じゃ、あたしでしたこともある?」 
どんな女の子でもしちゃうのかなぁ?とふと思い、何とはなしにそう言った。 

「……」 
あれ?何か私変な事言ったかな?彼が固まったぞ?? 

「いいだろ……そんなこと。それより女の子のほうはどうなんだよ。女の子も普通にひとりエッチするって聞いたけど。」 
「うん、するよ、普通に。あたりまえでしょ。」 

「…いつ頃覚えたの?」 
「ん〜…いつだっけなぁ…自分でするようになったのは中学3年生あたりだったかなぁ……」 

「……ふ…ふーん。やっぱり男と同じように写真とか見ながら?」 
「そーねぇ。写真とかは見ないけど、好きな人とのこととか考えながらとか、 
実際にそうなったときのこととか想像しながらとか………」 

「………男の射精みたいに、これで終わりっていうのはあるの?」 
「う〜ん…”いく”っていうのは在るらしいけどよくワカンナイんだよね。 
なんか時々、”きゅーん”っていう感じはあるんだけど…。殆ど疲れたら終わるって感じ。」 


教室の天井を見上げながら、自分がベットの上でしている動きを思い出してみる。 

まず右胸に手を這わせて暫く揉んでから乳首を攻める。 
触れるか触れないかっていうくらいの感覚が、ゾクゾクしてイイんだよね。 
それからパンツの上からあそこ全体をゆっくり撫でて濡れてきてから今度は直接。 
あそこのポッチ部分と乳首を一緒に刺激したときは、割と”きゅーん”っていうのあったかも… 
あ…このあいだのトイレのもそうだったな…… 
しかし、初めて教室で彼とああなった時みたいな感覚は今だかつて無かったし、あれ以来無い。 
あれが”いく”っていう感覚だったのかなぁ…… 

…あれ?何言ってたんだ??私!? 

顔を下げたら彼と目が合った。何か呆然としてる。 
自分の体を見ると、左手は胸に、右手はスカートの上から股間をあたりを押さえていた。 

……??……へ??? 

顔から火が吹き出たかと思った。 

「……や、やだっ!あたしったら何言ってるの!今のはアレよ、アレ。一般論だからね!あたしのことじゃないから。 
じゃ…あたし急な用事があるから帰るね。じゃ。」 

バタバタと両手を振って否定してみたものの、慌てっぷりが自分でもバレバレ。 
彼の前で自分のあられもない痴態を思い出していた上、いつの間にか 
ポロッと彼に話してしまった事に気まずくなって、逃げるように教室から出た。 

…何てこと言っちゃったんだろ……私…… 
……彼、絶対に想像してるよぉ………恥ずかしー… 
私は熱くなった顔を冷ますように手で扇ぎながら校舎を出た。 

その夜…おち○ちんがエッチな液を垂らしながら、大きな芋虫みたいに私の身体を這い回る夢を見た…… 


エピソードV -孵化- (了) 
- Metamorphose 〜変態〜 -