-エピソード]T-(番外編05) 

胸の鼓動が早い。 
さっきまでの行為からの照れとか喜びとかそういうんじゃない。 
強烈な不安感。 
気持ち良かった筈のべたつく汗が、今はあまりにも気持ち悪かった。 

左手の中にあるこれ。 
昼間見たこれ。 
あの桜色の首の汗を拭ってたこれ。 

何でこれが… 

固まる身体が足元をおぼつかせた。 
「あっ!…っと。だ、大丈夫か?紺野」 
「あ、ありが…と」 
危うく階段を踏み外しそうになった私を、彼が抱きしめるみたいにして支えてくれた。 

彼の匂いに強烈に蘇ってくるさっきの光景。 
…あの瞬間に見た愛ちゃんって… 

私を抱きしめたままで寄ってくる彼の顔。 
慌てて彼の腕からすり抜けた。 

「あ…わ、私、トイレ寄って身体拭いて帰るから。汗臭いしまだ汚れてるし…」 
「そ、そうか?…待ってるから出来たら一緒に帰ろ…」 
「ごめん!…なんか恥かしいし、部活とかで残ってる人に一緒のトコ見られるのもマズイし」 
彼の言葉が終らないうちに、早口で言葉を被せた。 

「そ、そうだな。雨でも無いのに、二人でこんなに濡れてるのも怪しいしな」 
胸にベッタリと張りついたシャツを摘んで、苦笑いしながらそう言う彼。 
「にわか雨でも降んねーかな」 
「…」 
「そ、そうすりゃ濡れて帰ればコレ気にしなくていいんだけどな」 
「…」 
更に強く浮かんで来る愛ちゃんの顔。 
音楽室で絡み合った時の嬉しそうな顔。楽しそうな顔。えっちな顔。 
土砂降りの雨の中、一緒にスキップしながら帰ったあの時の顔。 
そのどれとも違う無表情のさっきの愛ちゃんの顔… 

「じゃ、じゃあな」 
「…うん。ばいばい」 
無言になった私を持て余したのか、私の手を離した彼がそう言った。 
殆ど無意識に、そしてろくに彼の顔も見ずに私が答えた。 
彼は何度も振り返っては、ちょっとだけ寂しそうに階段を下りていった。 

普段だったら彼のその表情に何か感じたかもしれない。 
いつも別れ際に私が思っていた事。 
「私の事、どう思ってくれてるんだろう?」っていうその答えを… 

だけど「何故?」「どうして?」という疑問や不安で一杯の頭には、その事を感じる隙間は全く無かった。 

何故か益々震えちゃう手。 
ギュゥって押し潰されていく胸。 
そして重過ぎる足を懸命に動かして、私はトイレのドアを開けた。 

若しかしたら。というのがあったのかもしれない。 
ううん。 
あの時見えたのが本物なら「絶対にここに居る」と確信があった。 

――鏡に向って立っていたその人は、さっきと同じ表情で私の方にゆっくりと振り向いた。 

Tシャツにジーンズ姿。首に掛かってる私とお揃いのネックレス。 
私を真っ直ぐ見つめてくる目はどこか節穴みたいで… 
その人形みたいな表情に言葉が出なかった。 

ドアの戸っ手にへばりついた私の手が震えてる。 
それだけが、動きも音も無いこの場が、現実のものだと教えてくれていた。 

「………ぁ、愛ちゃ…」 
搾り出した声が掠れてる… 

何に怖がってるんだろう。私。 
男の子と肉体関係は有るって愛ちゃんには言っていた。 
そしてどんな事をしちゃったとかまで… 
ただ、「その人が誰か」を除いて全ての事をありのままに…… 

私のその報告を聞いてる愛ちゃんは顔を真っ赤にして、でも興味深そうで… 
報告を受けた日は物凄く激しくって… 
それでいて物凄く優しくって… 
だけど瞬間的に寂しそうな顔が見えたりして… 
そして… 
私が真っ白になる瞬間に、必ず同じ台詞を聞いてる気がして…… 

「……あ、愛ちゃん」 
動かないままの愛ちゃんに再度声をかけた。その声が震えてた。 

……何が怖いんだろう…… 

多分全て。 
頭を過る先週の悪夢。愛ちゃんもA君も失っちゃうあの…… 

脱力した手が戸っ手から離れてドアが鳴いた。 
それがスイッチだったように、ゆらりと動く愛ちゃん。私に背を向け個室に入って行く… 
「…愛ちゃ…」 
『カラン』 
無表情のままでゆらりと出てきた愛ちゃんの手には、何か握られていた。 

「…あ、愛ちゃん…あの…」 
私を透かして見るような目をしながら寄ってくる愛ちゃん。 
腕を強く掴まれてトイレから連れ出された。 

「…愛ちゃ……」 
「…」 
「あ…の…」 
「…」 
「ど、どこ…」 
「…」 
ただの音みたいな断片的な私の声に、返って来ない愛ちゃんの声。 
その状態のまま引き摺られるように階段を昇り、強烈な光の中を歩く。 
さっきまでとは別世界みたいに聞えて来る様々な音。声。そして熱。 

再び噴き出して、背中を腋を流れる汗が異様に冷たい… 
身体は熱いって言ってるのに何故か寒い… 
ものの1メートルも離れていない愛ちゃんの姿が妙に遠くに見えた。 

そして… 
愛ちゃんの脚が、不自然に濡れている地面の傍で止まった。 
私に向って振り返った愛ちゃんの口が開く。 

「脱いで。全部」 

表情の無いそんな言葉が聞えた。 

「な…ん…」 
「さっきまで脱いでたやろ?ここで」 
「あ…れは…」 
「してたやろ?」 
「…」 
「あれ、A君やろ?」 
「…」 
「下着透けとるよ」 
ゆっくりと。そして優しい口調ながら、愛ちゃんは低い声で淡々と言葉を刻んでくる。 
未だに無表情のまま私を見つめる愛ちゃんに、何を言っていいのか解らなかった。 
ただその視線から逃げるように、震える両腕で胸を隠して俯いた。 

「脱いで」 
「愛ちゃん…あ…」 
「制服汚れたらいかんし。脱いで」 
私の言葉を遮るように愛ちゃんが言葉を続ける。 

「淫乱」 

続けざまに吐き出された言葉に、聞こえていた音が消えた。 

端から見たらそう見えるかもしれない。こんな所でしてたんだから… 
でも、本気で自分が好きな人としかえっちはしてない。 
A君にしても愛ちゃんにしても… 
好きだから、大好きだから、相手の温もりも匂いも欲しくなるのに… 
その事は愛ちゃんだって十分に知ってる筈。 
それだけに、頭の中で木霊してるさっきの言葉があまりにもショックだった。 

確かに二股になってることは解ってる。悪い事だとは自覚してる。その点では淫乱かもしれない。 
だけど、身体を重ねる毎に『好き』っていう気持ちは膨らんじゃって、どっちも離したく無いんだもん… 
愛ちゃんだってそれは…… 

「気持ち良かったら、誰だって、何だってええんやろ?」 
「痛っ…」 
自分に都合のいい言い訳を抱えながら俯いたままの私に、そんな言葉がぶつけられた。 
私の腕を掻き分ける様に入った愛ちゃんの手が、胸を強く握り潰す。 

何の優しさもいたわりも感じられないその手を反射的に払いのけた。 
「どうせ濡れてるんやろ?」 
払った腕が今度はスカートの中に入り込み、乱暴にあそこを掴んできた。 
「きゃっ!や、だっ!!」 
その手を払いのけた瞬間、愛ちゃんの表情が変わった。 

怒りのような悲しみのような歪んだ表情。 
「ずるいよ…」 
ポツリと零されたその言葉に、何故か私の体が一瞬固まった。 

胸をまた鷲掴みされ、その腕で給水塔の壁に押しつけられる。 
棒状の何かを持ったもう片方の手が、乱暴にパンツを下ろしにかかる。 

「愛ちゃ…や…だっ!…め‥てっ……」 
『ビリッ』 
愛ちゃんを押し返しながら、片手で下ろされまいと抵抗してたパンツが引き裂かれた。 
それでもなお抵抗する私を引き倒し、逃げようとするうつ伏せの私からパンツを剥ぎ取った。 
片方の足に馬乗りになり、もう片方も膝を曲げて大きく開かれ、体重をかけて抑えつけられる。 

「いっ!!」 
乾き始めていたあそこに痛みが走った。 

「…う゛っ…あっ…あ゛っ!…」 
整汗スプレーに似た太さの物が、無理矢理中に押し込まれていく… 
それを抜こうと伸ばした私の手にプラスチックの感触がした。 

「似てるやろ…」 
私の抵抗を物ともせずに、強引に出し入れを始める乱暴な愛ちゃんの手… 
持ち方のせいなのか、突かれる度にポッチも強く潰される。 

「う゛っ…うっ!…うっ!」 
火種がまだ残ったままだったのか、突き立てられる痛みや苦しさの中に交じるポッチからの快感。 
動く手を必死に止めようとする私の手から力が抜けて行く… 

―――何で?――― 

あそこからの痛みよりも、優しい筈の、そして大好きな愛ちゃんのこの行動に心が物凄く痛かった。 
そして相手が愛ちゃんとはいえ、こんな乱暴にされながら感じてしまう自分が嫌だった。 
声を出さないように、必死に唇を噛みこんでいた。 

「………ぃょ…」 
私の背中に落ちてくる、繰り返し聞える愛ちゃんの呟くような声。 
未だ抵抗する私の手が、後ろ手に愛ちゃんのほっぺに触れた。 

その濡れた感触に、私は抵抗するのを止めた。 

多分これは神様の私への罰。 
愛ちゃんもA君も離したく無い。っていう我侭を言ってる私への… 
結果的に二人を裏切ってる私への…… 
そんな最低で淫乱な私への……… 

愛ちゃんに乱暴されても当然の事してるから… 
愛ちゃんの怒りとか憤りとか悲しみを全部受けなきゃならないって… 

一定のリズムで滲んだまま揺れるコンクリートの地面。目の前にある、精液を、私のえっちな液を拭った濡れ跡。 
顔から滴り落ちる汗が涙が、その跡をじわじわと大きくして行く。 

んちゅっ…くちゅっ…「はっ!」…くちゅっ…ぐちゅっ… 

いつの間にか淫らな音を発してる私のあそこ。そして時折漏れてしまう自分の吐息… 

「こんなのでも感じるんやろ!」 
あそこに突き刺した物をそのままに、それから手を離した愛ちゃんが私を仰向けにした。 
そして下腹部に馬乗りになって、制服をブラ毎、胸の上まで無理矢理たくし上げた。 

「A君に揉まれていやらしい声出してたんやろ!のぉ!」 
「いっ!…」 
乳首に爪を立て、両胸を乱暴に握り込まれる。 
ほっぺに涙の跡を残しながら、さっきよりも怒りの、悲しみの表情を露にしてる愛ちゃん。 

―――ちゃんと受けとめなきゃいけない。愛ちゃんを裏切ってた自分の罪を――― 

痛みをこらえながら、好きなようにしてと言うように愛ちゃんから顔を逸らし、 
私はギュッと目を瞑ってされるがままになっていた。 

乳首を指で摘まれゴリゴリと捻られる… 
「いっ!…」 
爪を立てながら胸を握り押し潰し、引っ張り、乱暴に捏ねまわす… 
「つっ!…いっ!…くっ!……」 

「さっきみたいにえっちな声上げてイっちゃいなよ。この、淫乱!」 
胸から離した片手で、愛ちゃんは私のあそこに挿し込んだ棒を突きまくる。 
えっちな音は立ってるものの、ポッチに触れられず、ただ中に突き立てられる行為は苦しいだけだった。 

「…う゛っ…う゛っ…くっ!…う゛っ…う゛っ…」 
いつまでも声を上げない私に苛立つように、胸を掴んだ手がギリギリと搾られて行く… 

痛くっても我慢するんだ…愛ちゃんの心を傷つけちゃったんだから…… 
噛み込んだ唇が切れたのか、口の中に血の味がする。 

「チッ…」 
舌打ちするような音。 
「…んああっ!!」 
突いていた棒を引き抜かれ、その代りに忘れ様も無い感触が中のポイントを激しく擦り出した。 

「んきゃ!あああっっ!!だ、だ…めっ!!…いっ…ちゃ……」 
胸を絞られながらも激しく捩れる私の身体。 

「淫乱!淫乱!淫乱っ!」 
愛ちゃんの言葉が降り注ぐ。 

淫乱でもいい…愛ちゃんにされてるなら…愛ちゃんにならどう言われたって…… 
乱暴にされても、本気で大好きだからこんなにも感じちゃうんだ。気持ちいいんだ。嬉しいんだ… 

一気に霞む頭。そして全身から噴き出す汗。バタつく脚。仰け反る背中。 
されている状況も何もかもが吹き飛んで、条件反射のように目の前の身体にしがみ付いた。 
いつもと同じ愛ちゃんの甘い匂い。 

「愛ちゃんっ!…愛ちゃんっっ!!…イっ…ちゃ…きゅっ…ぅぅぅぅぅ……」 
硬直しながらも、ビクンビクンと痙攣する全身。 
それを抑えるかのように、しがみ付いた腕に力が入る。 

「えっ?…あ…あ……な…」 
力一杯愛ちゃんにしがみ付き、その温もりや匂い。貰ってる快感の幸福感に意識が溶かされて行った。 

意識が消えかかる間際に聞えた声も、いつもと同じ愛ちゃんの声だった。 

自分の荒い息が聞こえてる。 
そして、汗をかいた時の濃く甘い愛ちゃんの匂い。 
私の腕の中の華奢なその身体は、震えながらもいつもと同じ、私を幸せにする体温を伝えて来ていた。 

力なく私を剥そうとする腕に逆らって、その身体を強く抱き締める。 
「…あ…さ……」 
「…愛ちゃ‥ん…」 
離しちゃったらいけない。離したら愛ちゃんと終っちゃう。私が悪いのに愛ちゃんが自分のせいにして… 

おもいっきりイかされた後だけに、身体にはイマイチ力が入らない。 
だけど、その身体を抱き締めた腕に出来る限りの力を込めた。 

「うっ……グスッ……グスッ…あ…さ゛美ち゛ゃん。ゴメン…」 
愛ちゃんは切れ切れにそう言った後、堰を切ったように泣き出した。 

「あーじ…あーじ……」 
「いいから…」 
「や、やっで……ごんな…」 
「いいの」 
「乱暴…」 
「愛ちゃんになら何されても平気」 
号泣しながら話す愛ちゃんのその言葉を遮るように私はそう言った。 

「やけ‥どっ……こんな…酷い事…」 
「…最後は愛ちゃんの指でちゃんとしてもらったし」 
「エグッ……ウッ……」 
「…私の方が悪いんだし。…愛ちゃん、いつも『好き』って言ってくれてたのに、ね」 

若しかしたら、私の相手がA君だったからかもしれない。 
だけど、今こうして泣きながら抱き付いてくれる温もりは、私に向けての物としか思えなかった。 

『のぉ?あーしの事好き?』 
『ん〜、どうかなぁ?…ひゃっ!ぅんっ!!…』 
『何やざ〜、それ』 
『も、もぅ。判ってるくせに。…はっ!ぁんっ!』 
『判らん』 
『え〜〜?そんなぁ…』 
『あーしはあさ美ちゃん事、ちゅきっ!』 
『んへへへへ』 

私の耳に、首に、乳首に、あそこにキスをしながら甘え声で囁く愛ちゃんの台詞。 
どうしても照れちゃって、はぐらかしてばかりだった。 
握った手に力を込めたり、乗ってる身体を抱き締めたり、頭を抱え込んだりして伝えてるつもりだった。 

『ズルイよ…』 
『イジワル…』 

私を浮遊させながら、ちょっとだけ拗ねたように、でも『仕方ないなぁ』っていうように呟く台詞。 

『アイシテル』 

真っ白な世界の中で、柔らかく私を包むみたいに被せられるその言葉。 

どうして今まで、ちゃんとその言葉に返せなかったんだろう。 

…『あーしは2番目でええよ』っていう愛ちゃんの言葉が重かったから? 
…A君と愛ちゃんの二股をかけてるからだったから? 
二股を知っていながらも、そんな淫らな私をまっすぐに愛してくれる事に後ろめたさがあったからかもしれない。 

だけどこんなに激しく気持ちをぶつけて来てくれる相手には、きちんと自分の気持ちも伝えなきゃいけないと思った。 
行動だけじゃなく、目に見える形で。耳に残る形で。レシートとか領収書みたいに… 

「愛ちゃん…アイシテル」 

すすり泣く愛ちゃんの頭を抱えながら、ゆっくりとそして心を込めてそう言った。 
それと同時に、A君の事はキッパリと諦めよう。カラダを合わせるのももう終わりにしよう。 
そう心に思った。 

「絶対に離さないから…」 
「う゛…ん……ェグッ…」 
首元に埋まってる愛ちゃんの顔を覗きこむように、髪の上からこめかみにキスをする。 

「愛ちゃんも私の事離さないでね」 
「…う゛ん…」 

…愛ちゃんがA君の事が好きなら素直に応援しよう。 
私には愛ちゃんが居てくれればそれだけでいい。 
もし、私がしてたみたいに二股かけられても愛してくれるなら… 
『キライ』って言われても離すもんかっ。 

そんな想いを乗せて、愛ちゃんのほっぺを両手で包み、濡れている唇に私の唇を押し付けた。 

「あじ‥がど……」 
私の胸に手を乗せたまま益々震える愛ちゃん。 
いつの間に降り出してたのか、霧雨みたいな天気雨が火照ってた身体を冷まして行く。 
それとは逆に、首筋に降って来る温かい大粒の雫は私の心を熱くしてくれた。 

どのくらいの時間そうしてたろう。 
ピーカンだった空からの霧雨は、いつしか本格的な雨粒になっていた。 

剥き出しのままの私の下半身をその雨が洗い流して行く。 
私のあそこの汚れも… 
傍らに転がってる、トイレットペーパーを支える棒に付いた少しの血と粘液も…… 

「エグッ……雨……汚れる…制服……」 
少し落ち着いたのか、鼻を啜りながらそう言ってゆっくりと私の腕から離れた愛ちゃん。 
泣き腫らした真っ赤な目元をそのままに、俯き加減で私の腕を引いて立たせてくれた。 

「…っ!…こんな…ゴメン……グスッ……」 
ぼろ布になって足首に絡みついてる私のパンツがショックだったのか、 
崩れ落ちるように地面に座り、両手で顔を覆ってまた泣き出した。 

愛ちゃんが残した乱暴の跡を消すように身なりを整え、肩を震わしている身体を優しく抱き締める。 
転がってた棒と破れたパンツは、さりげなくハンドタオルで包んでポケットの中に入れた。 

「愛ちゃん……平気だから…」 
「…エグッ……ゴメン…」 
「大好き…」 
「う゛ん…」 
「だから…泣かないで…」 
「う゛ん…」 
「愛してる…」 
「う゛ん……」 
「私の方こそ、ゴメン…」 
「あ゛ーじ………ゴ、ェグッ…メン…」 
「風邪ひいちゃうから中入ろ?ね?」 

顔を覆ってる手をそっと握って愛ちゃんに話し掛ける私。 
指を絡めてギュッと握った私の手を、愛ちゃんは俯いてしゃくり上げながらも強く握り返してくれた。 
雨でぐしょ濡れになった頭が小さく頷き、また「ゴメン」と呟いた。 

濡れたまま廊下を歩く訳にもいかないし、せめて愛ちゃんをもう少し落ちつかせようと、 
全身から水を滴らせながら階段を下り、熱気の篭ったトイレに再び戻った。 

「とりあえず身体拭こ?ね?…ちょっと湿っぽいけど、これ」 
ポケットの中から上手くハンドタオルだけを取り出して、 
綺麗な面で濡れた愛ちゃんの頭を拭こうと手を伸ばす。 

「ェグッ…あさ美ちゃん、先…」 
俯いたまま、私のその手を押し返す愛ちゃん。 

「愛ちゃんのほうが濡れてるんだから。ほら」 
上になってた愛ちゃんは背中なんてグショグショ。 
どのみち止みそうも無い雨の中を濡れて帰らなきゃいけなさそうだし、 
ここで拭く意味は無いかもしれない。 
だけど、とりあえず校舎の中で人と合ってもマズク無い程度に体裁は整えようと思った。 
そして、愛ちゃんの涙みたいな雨粒を早く拭ってあげたかった。 

空いてる手で私の制服の裾を遠慮気味に掴み、シャクリあげ、俯いてる頭を優しく拭いて行く。 
そうしながら、どうして学校に戻って来てたのか聞いてみた。 

まだ鼻を啜りながら話す愛ちゃんによると、 
お母さんが動けるようになったから、私の家に遊びに行ったらしい。 

まだ帰ってなかったし、別れ際に半分居眠りしてた私を思い出して迎えに来てくれたこと。 
そして鞄を残して私が見当たらないから、なんとなくシタことのある場所をウロウロしてたこと… 
A君も残ってたなんて全く気が付かなかったこと…… 
誰か居る。って思って、何の気無しに覗いたら動けなくなっちゃったこと…… 

「…取ら゛れる…ェグッ…と、おもた…」 
「私には愛ちゃんがいるのに…酷いよね、私。……淫乱だよね…」 
「違う!あざ美ちゃんはぞんな…ぞんな……あーじが……」 

そう言いながら勢い良く顔を上げて私を見たその目から、またボロボロっと涙が零れた。 
「A君とはああいうのもう終わりにするから…ゴメンね…」 
「……ェグッ…」 
ハッとしたような表情になった愛ちゃんは、また俯いて肩を震わすばかりだった。 

「背中は気持ち悪いかもしれないけど、こんなもんだね。どうせまた雨で濡れそうだし」 
「あさ美ちゃん…拭く」 
滴り落ちる雨粒を大まかに拭い、顔に貼り付いた髪の毛を剥す私の手を掴んで愛ちゃんがボソッと言った。 

「じゃ、お願い」 
タオルを渡し、空いた手を愛ちゃんの片手に絡ませる。 
愛ちゃんが逃げないように。愛ちゃんに逃げられないように… 

目を瞑って、顔を、首を、頭を拭かれる私。 
蒸し暑いトイレの中で、熱気で蒸された愛ちゃんのシャツから香る雨と愛ちゃんの匂い。 
ただ手を繋いでこうされてるだけで幸せだった。安心出来た。鼻の奥がツンとしてくるくらい… 

前触れも無く、唇にちょっとしょっぱいけど柔らかく温かい感触。 
目を開けたら照れくさそうに顔を背けられちゃった。 

「下も…拭く。ね。スカート持ってて」 
「う、うん…」 
一度搾ったタオルをお腹に当てられ、お尻を脚を、そしてあそこの周りを拭かれて行く。 
汚れて塊のように絡まった毛も、割れ目の中も、時折タオルに自分の唾液を含ませながら丁寧に丁寧に… 

太ももに置かれた愛ちゃんの手が物凄く温かかった。 
まるで冷えて緊張した私の下半身を、その手の温度で柔らかくほぐしてくれてくみたいに。 

そうなると、どうしても出てきちゃう生理現象。 
出口の辺りも撫でるみたいに拭かれちゃって、尿意は増していくばかり。 
その上敏感な部分を触られるくすぐったさは、腰の奥を突付かれるような快感に変わり始めていた。 

…これで気持ち良くなっちゃったらホントに淫乱だ…感じたくないよ……お願い!今はダメ… 
感じちゃう身体を止めるように、まだ丁寧に拭いてくれてる愛ちゃんの手を止めた。 

「あ、愛ちゃん…ぉ…おしっこ…」 
「あ…うん」 
恥かし過ぎるけど、愛ちゃんの姿を見失いたく無くって個室のドアを開けたまま便器に座る。 
離せなかった手の先には愛ちゃん。 
それが当然の事のように、一緒に入ってきた愛ちゃんが後ろ手にドア閉めた。 

「み、見ないで…ね。お、音も…聞かないで。恥かしいから…」 
「ぅん…」 
「ん…」 
下腹部の力を緩め、おしっこが出そうになった瞬間、唇を塞がれた。 
そして勢い良く水の流される音… 

「ふぁ…あっ…」 
止めようと下腹部に力を入れ直す。間に合わなかった分が、ちょろっと漏れてお尻を伝った。 

甘い匂いを私に掛けながら目の前の唇が動く。 
「これで聞こえんし、見ないから。しちゃってええよ…」 

そう言った唇が、薄く開いたままでまた私の唇にくっついた。 

その言葉に、自分の意思とは関係無く下腹部の力はあっさり緩み、身体は勝手におしっこをし始める。 
一度出始めちゃったものは、止めようと思ってもどうにも止まらない。 
塞がれた口の中も、遠慮気味に撫でてくる舌を絡め取ろうと自分から舌を伸ばしちゃってる… 

キスをしながらおしっこするなんて…… 

痺れちゃう頭。力が抜けていくカラダ。 
それでも尚、必死におしっこを止めようと中途半端に力が入る下腹部。 
勢いの削がれたおしっこはお尻のほうに流れていく… 
お漏らしをしているみたいなその感覚に顔がどんどん熱くなる。 
そしてせっかく収めたあそこの疼きが再び強く湧き上がって来ちゃう… 

漏れ出て行くおしっこの代わりに、口の中に入り込んで来る甘い唾液。鼻に届く愛ちゃんの髪の匂い。 
「…ダ…メ…」 
「…ええから…」 

キスされながらお漏らししてる…こんなの…ダメ…嫌…気持ち良すぎる… 
…やっぱり淫乱だよ。私。…でも…こんな事出来る相手は愛ちゃんしか……愛ちゃんだから…… 

いつもみたいな変態的行為に歓んじゃうもう一人の自分が、愛ちゃんの首を抱え込んだ。 
それに答えるように私の両脚を跨ぎ、座るみたいに抱き付いてきた愛ちゃん。 
お腹を押されて、一瞬だけ勢い良くおしっこが飛んだ。 

…抱かれながら…深いキスをしながら、お漏らししちゃってる…… 

強く疼くあそこから、おしっことは違うものが零れた感じがした。 

おしっこは終わっても、キスはいつまでも終わらない。 
その間にも、漂って臭いが恥かしいのに、愛ちゃんに嗅がれてると思うだけで頭の痺れが強くなっていく。 
そしてその恥かしさとキスの気持ち良さが、別の濡れた感じを割れ目の間へ更に広げて行く。 

「…終わった?」 
「…ん…チュッ……ぅん…」 
「…あーし…拭く……」 
「…ぅん…」 

私の脚から下りてトイレットペーパーに手を伸ばす愛ちゃん。 
「…立って…」 
ペーパーを手に撒き付けて、目の前にしゃがんだ赤い顔が私を見上げた。 

お尻を浮かし、中腰になった私のあそこからは透明な糸が長く伸びていた。 
「あ…」 

恥かしさに、慌てて座り直そうとした私のお尻を愛ちゃんに抱えられる。 
そして『拭く』と言った筈の愛ちゃんの顔が、そこに近づく… 
「やっ…だめぇ……汚な…」 
私が言い終わる前に、熱くヌメる感触があそこの間に滑り込んで来た。 

恥かしいのに逃げられない。動けない。 
汚れた股間を這う舌に全身を震わせるばかりだった。 

おっしこの残滓を拭うように、そして溢れてきちゃうえっちな液を全て拭う様に、 
前を舐め終わった愛ちゃんが後ろに回り込み、お尻にまで舌を這わせて来る… 

「ぁ…愛ちゃん…こんなのダメっ…だよぉ……」 
仕切りの板に手をついて、崩れそうな膝に懸命に力を入れ、愛ちゃんに中止を呼びかける私。 
だけど身体は益々熱くなり、あそこからは止めども無くえっちな液が溢れて来ちゃう。 

…ダメ…私ばっかりなんて……私よりも愛ちゃんを気持ち良くしてあげたいのに… 

ソフトに丁寧に、そしてあまりにもゆっくりと私の股間を撫でまわる舌から逃れ、 
僅かに汗ばんでいる愛ちゃんの首に吸いついた。 
そこから耳へ唇を這わせ、耳たぶを軽く噛む。 

「っはぁっ…」 
愛ちゃんの好きなこの行為。吐息を吐きながらプルッと震えるその身体。 
首を抱えながらその耳元に囁いた。 

「好き…愛ちゃんだけ…愛ちゃんしか……だから、私より愛ちゃんを気持ち良くしてあげたい… 
愛ちゃんがそうなってくれれば、私も…凄く気持ち良くなれるから……」 

「…あ…あーしも……あーしで気持ち良くなって欲しい…」 
愛ちゃんはそう囁きながら、私と同じように耳たぶに軽く歯をたてた。 

「…脱ごっか。愛ちゃん…」 
「…脱ご」 

互いの首を片腕で抱きつつ唇を合わせ、もう片方の手で互いの下を脱がしていく。 
雨で濡れた以上に汚さないように、蓋を閉めた便器の上にそれらを重ねる。 
離れたくない唇を泣く泣く離し、互いの上着も脱がしていく… 

再び唇を合わせながら互いのブラを外し、遮るものの無くなった火照った肌を、 
傍らで重なり合う衣服に負けないくらいに密着させた… 

山になった二人分の衣類から滴り落ちる水分が混ざり合い、 
私と愛ちゃんの太ももを垂れ落ちている雫みたいに、便器の脇に一筋の道を作ってる。 

愛ちゃんが私の内ももに、ゆっくりと雫が落ちてる自分の内ももを擦り合わせて来た。 

裸になった身体が放つ諸々の匂いと、 
雨の水分や汗、垂らしちゃってるえっちな液を混ぜ合わすかのように身体を合わせる。 
少しベタつく肌が、互いの肌を自分のものにするように吸い付き合った。 

まるで呼吸も共有しようとするみたいに塞ぎ合った口も離れない。 
けれど何故か勿体無くって、舌を激しく絡ませる事は出来なかった。 

とにかく優しくゆっくりとお互いを撫で合う舌先。 
時折思い出したように舌の裏に入り込む感触が、背中を撫でるような感覚を送り込んで来る… 

このままキスして抱き合ってたら、お互いがお互いの身体の中に取り込まれちゃって 
別の1人が出来ちゃうんじゃないかと思えてきちゃう。 

…そうなれたら嬉しい…出来る事ならそうなりたい… 

首を抱えていた両腕を下げ、片手は背中を、片手はお尻を抱えるように、 
苦しいくらいに愛ちゃんに向けて身体を押し付けた。 

「…んっ…ぁ…」 
小さく呻き声を漏らしながらも、愛ちゃんも私と同じように腕を回して抱き着いてくれる。 

潰れ合った互いの胸は、密着を引き離そうとするように張りを増し、 
勃った乳首は刺さるみたいに乳房に当たり、チリチリと快感を与えてくれる。 

その密着とキスだけで、片脚を挟むように絡まったお互いの内股は、 
ありえないほどの大量のヌメりで時折音を立てる程だった。 

とにかく気持ち良く、幸せで、このまま死んじゃってもいいくらいに嬉しかった。 

お尻に張り付いただけの愛ちゃんの手が、あそこの奥深くへ塊のように熱を送り込んで来てくれる… 
まるであそこの中に、次から次からお湯を流し込まれてるみたいなその感覚。 
不思議とその感覚は、指でゆっくりと掻き回されてるかのようにリアルに思え、 
実際にそうされてる時以上の大きな快感の波を全身の隅々まで広げて行った。 

震えちゃう脚や腕。指先までも… 
その中の愛ちゃんも私と同じくプルプルと震えてる… 
そして爪を立てないように、曲げた指を私のカラダに埋めるみたいに立てて来てくれる… 

愛ちゃんになら傷つけられてもいいのに…その傷は愛ちゃんの印なんだから… 

「…爪…立てて……愛ちゃんの印…点けて…」 
唇が触れたままの距離で囁く私。 

「…はぁぁっ……や、やって…」 
戸惑うような愛ちゃんの吐息みたいな声。 

「お願い……愛ちゃんの印…強く……」 
「…ええ…の?…」 

答える代りに愛ちゃんの熱い舌を軽く噛んだ。 
ザラリとするその感触に、えっちな液を垂らしまくりのあそこが、また『ジュン』ってしちゃう… 

熱い吐息と鼻息を吐きつつ、私の肌の上をおずおずと伸ばされてく愛ちゃんの指。 
少しでも痛くしない様にするみたいに、ゆっくりと爪がめり込んでくる… 
「…だ、大丈夫?…」 
「……もっと…」 
チリッと焼けるような痛みが胸を締め付ける。 
そんな精神的快感と共に、背中が泡立つような肉体への快感。 

「…あ…あーしにも…」 
愛ちゃんのその囁きに、私も同じように爪を立てた。 

「ふぁぁっ…あさ…美、ちゃん…」 
軽く痙攣した愛ちゃんの唇に一瞬だけ逃げられた。 
その代り、愛ちゃんの股間に挟んだ私の太ももを熱い液が垂れ落ちて行った。 

互いの唇を舌先を、ちょっと痛いくらいに噛み、吸っては、その痛みを消すように撫で合った。 
痛みは快感となって、霞んで痺れてる頭の中に火花を散らす。 
そんな痛みを除けば、ただ抱き合ってキスをしてるだけ。 

…何でこんなに感じちゃうんだろう? 
……何でこんなにカラダが震えちゃうんだろう? 
………何でこんなに胸が苦しいんだろう? 

あそこからはえっちな液が止めど無く溢れ、恥かしい匂いを撒き散らす… 
高い気温と興奮は全身に汗を噴き出させ、互いの体臭を搾り出す… 
狭く蒸し熱い個室の中で、それらは混ざり合い、蒸され、濃縮されていく…… 

のぼせるような熱さ。全身に粘りつくようなこの匂い。 

―――若しかしたら今、自分は愛ちゃんのあそこの中に入っちゃってるのかも。――― 

そんな錯覚を覚える程に、熱く苦しく、でもここち良く、そしてえっちで、 
それでいて、おもいっきり泣いちゃいたいくらいの気持ちだった。 

霞んでる意識の向こうに浮かぶ愛ちゃんのクシャっとした笑顔。 
ちっちゃい子供みたいに、甘え声で「ちゅきっ」って言ってる笑顔。 
私にだけくれるこの匂い。このヌメり。体温。 

離さない。絶対っ。 

嬉しいとか、幸せだとか、気持ちイイだとか、 
そんな言葉で表せない程の気持ちが、愛ちゃんの肌に突き立てた私の指に力を込めさせた。 

「ぁ…」 

震えながら、一瞬だけ私の肌にも爪を強く立てた愛ちゃん。 
その首が私の口から零れるみたいに、カクンと横に倒れた。 
そして重力に引かれるようにダラリと落ちる腕。重くなった身体。 

「ぇ…?」 
壁側に居た私に圧し掛かってくるように、それが崩れ落ちて来た。 

フワフワしてた私の身体でそれを支える事は完全に無理。 
腰が砕けたみたいに床に尻餅をついた私。 
「はっ!…ぁっ!…」 
思いがけず、その衝撃が快感に変わり、『ジュッ』っと溢れちゃうえっちな液。 
振動は背中を掛け上がって頭の中の霧を深くして行く… 

ぁ…ダメ…このままイっちゃったら愛ちゃん倒れちゃう… 

押し寄せる波に耐えながら、圧し掛かっている重さと腕の中の温もりを抱き直す。 

体育座りみたいな私の片脚に乗った愛ちゃん。 
ヒクヒクしてる火傷しそうに熱いあそこから、私の脚の付け根にえっちな液が垂れて来る。 
それが私のあそこの外側を撫でるように落ちて行く… 

それはまるで愛ちゃんの舌で舐められてるみたいで…… 

「はっ!…はぃっ!ひゃ…ん……」 
だらんと天井を向いたままの愛ちゃんの頭を咽元に掻き寄せたと同時に、 
目の前にあった世界が真っ白になった。 

ぼやけながらも戻ってきた視界。 
脚の付根からあそこの外へかけて残ってる生暖かい湿り気。 
自分のお尻の下もやたらと生暖かく、そしてヌメっていた。 
それを考えても、意識を飛ばしちゃってたのはものの数分だったみたい。 
未だに脱力して動かない愛ちゃんを抱えたままで目が覚めた。 

『死んじゃう』と感じちゃう激しく強い快感とは違ったけれど、物凄い充実感。そして脱力感。 
そんな中で規則的に咽元にかかる愛ちゃんの息。密着した胸が感じる心臓の音… 
再び目を閉じて愛ちゃんの頭を撫でながら、それらに自分の呼吸も心臓の音も合わせようと集中してみる。 

「…ぁ」 
「…お!」 
「……」 
「…心臓はやっぱり無理かな」 
ボヤいてた私の声に、愛ちゃんがピクンと身体を震わせた。 
「愛ちゃん?」 
「……」 
無言のままで腕が動いて私の腰を抱き締めて来る。 
何かを確かめるみたいにその手が私の腰を擦った。 

「…愛ちゃん?」 
「…ぅ…ん…」 
モソモソと動いた頭が首筋を上がる。 
裸で抱き合ってる時の定位置。ほっぺを擦り合わせるように、私の肩に顎を乗せて止まった。 

「……匂い…あさ美ちゃんの…する……あーしの…」 
「愛ちゃんのだよ…」 
寝言みたいな愛ちゃんの声に答える私。 
その声に答えるみたいに、愛ちゃんは髪に中に更に鼻を埋め、腰にまわした腕に力を込めた。 

「キス…だけでイってもぉた…」 
暫くの後、私の顔の正面に顔を出した愛ちゃんが俯いたまま照れくさそうに言う。 

「…爪、立てられたの、ポッチ弾かれとるみたいやった…」 
「凄い濡れちゃったもんね、愛ちゃん。お漏らししたみたいだよ。これ」 
「えっ?、やっ…」『クチュッ』 
恥かしそうに身を縮め、僅かにお尻を浮かした部分から湿った音が立った。 

「あ…」『グチュッ』 
…力無くすぐさま落ちるそのお尻。そしてさっきよりも淫らな音。 

「…ゃ」 
そんな自分の状況が恥かしいのか、愛ちゃんは私から顔を背けて身体をもっと縮こませる。 

いつもと違って妙に恥かしそうで照れくさそうな愛ちゃん。 
初めてこういう関係になったみたいなその雰囲気が、なんだかくすぐったい。 
キスだけでここまでなるのは無かったけれど、このくらい濡れた事は何度かあったのに。 

「愛ちゃん。そんな照れないでよぉ…」 
「や、やって…こんな…恥かし……あれだけで腰立たんし…」 
真っ赤な顔をして上目使いで私をチラチラ覗き見る愛ちゃん。その表情に益々照れちゃう私。 
ちっちゃい子みたいに可愛くって、でも胸元にキラキラしてる汗は妙に色っぽくって視線を合わせられなかった。 

「そ、そんなに恥かしがられちゃ、私もイっちゃったの恥かしくなるよぉ…」 
「え?…あ、あさ美ちゃん…も?」 
「ぅ…うん…」 

私のあそこにそっと触れた愛ちゃんの手。 
「…またおしっこしたんや」 
「違っ!…これは凄い濡れちゃ………」 
ぺったりとそこに手を張り付けた愛ちゃんは、俯いて耳の先まで真っ赤にしながらも 
悪戯っ子みたいな表情で私の顔を覗き見ていた。 

「もぉ!」 
イジワルな愛ちゃんから顔を背けつつ、脚に乗ったままの愛ちゃんの股間に同じ仕返しをする私。 
腰が引けた愛ちゃんのそこから、またえっちな音がした。 

「ねぇ…」「のぉ…」 
タイミングのばっちり合った照れくさそうな二人の声。 
それだけで、顔を見合わせなくても解っちゃう相手の考え。 

ちっちゃく音を立て、透明な糸を私の脚に引きずりながら仰向けになるカラダ… 
「…あんま見んで…恥かしいよって……ベチャベチャやし…」 
脚を閉じ、鼻と口を手で隠しながら横を向くそれ。 

「脚開いて…」 
「あ、あさ美ちゃん先に…来て…」 
言われたとおりに愛ちゃんの顔を跨ぐ。 

「狭いね」 
「その分密着できる…」 
「んふふっ…そうだね」 

「脚…」 
「あ、ぅん……」 
内股へまでも蜜をはみ出させ、今も尚、窄みへ向かって照りのあるそれを零す充血したそこ… 
どこかケーキみたいなそこに、深く、でもそっと顔を埋めた。 

ドキドキしちゃう芳香と熱に包まれる顔。それにいつまでも舐めていたい味が口の中に広がって行く… 
ほっぺをギュウギュウ挟んで来る柔らかな太ももの肌も、まるでお餅みたいだった。 
夏なのに、クリスマスとお正月が一遍に来たらこんなかも。って、食いしん坊の私がふと思った。 

……あそこからお尻までをねっとりと這いまわる熱に、すぐにえっちな私だけになっちゃったけど。 

***** 


外はいまだに土砂降りの雨だった。 
屋内の部活の声や音も掻き消され、じゃみじゃみになったTVの音を聞いてるみたい。 

「送るから、はよぉ乗って!」 
愛ちゃんにそう促されて自転車の荷物と化した私。 
雨に濡れ、掻き消される愛ちゃんの匂いを探すみたいに、その腰を抱えていた。 

あそこ同士をくっつけ合って激しく擦ったせいか、ちょっとだけヒリヒリしてるあそこ。 
ヒリヒリしながらも、愛ちゃんのパンツに包まれた私のあそこはベチョベチョだったり… 
実は、汚れちゃってるのに自分に付いた相手のえっちな液が勿体無くって拭いてなかったり…… 

それまでも土砂降りの雨は勝手に洗い流していく… 

…お互いに物凄く照れながら服を着直した。 
…もっとシタいからって、「あさ美ちゃんの家に行こう」って言った筈。 
…えっちな液でべちゃべちゃの口でキスをして、「あーしら変態カップルやな」って笑ってくれた筈。 
…手を繋いで教室に戻る時、「あーしらの匂い点けしとけ」って、 
無意味に廊下をジグザグに歩いたのは何だったの? 

……私の席で、「あーし達、両想いでええんよね」って言ったのって…… 

全部嘘なの? 


『チュッ……ん…』 
『あ、愛ちゃん。これ、ハンカチ』 
『…えっ!?』 
『階段に落したでしょ』 
『……ぁ…』 
『…愛ちゃん?』 
『…………それ、あさ美ちゃんにあげる』 
『なんで?』 
『………………こういう関係、やっぱり…止めよ。…もう』 
『な……』 
『…あ、あーし達、女同士やしの。変やって、やっぱり』 
『…か、関係ないじゃん。そん……』 
『あさ美ちゃんにはA君居るし、の』 
『違っ!…もう愛ちゃんだけ……』 
『はい!そう言う事で帰るで!』 


一方的にそう言って、絶句してる私の手を普通に取って昇降口まで歩いて行った。 
『送るから、はよぉ乗って!』って、いつもみたいな笑顔で…… 

「さっきの冗談だよね…」 
多分雨の音で愛ちゃんの耳には聞こえてない。 
懸命にペダルを漕いでるその腰にしがみつき、背中にほっぺをくっつける。 
私の家の前に着いても、その体勢は崩せなかった。 

「あさ美ちゃん。ついたで〜」 
雨音に負けない声でそう言った愛ちゃんが私の腕をそっと掴んだ。 
離したくないのに外れていく自分の腕。力が入らない。なんで?なんで? 

こっち向いて「さっきのは冗談やって」って笑ってよ…… 

「あ…愛ちゃ…んっ…」 
振り向きざまに歯がぶつかるくらいのキス。しょっぱいキス… 

「じゃぁの」 
そう元気に言ったびしょ濡れの愛ちゃん。 
私の大好きなくしゃくしゃな笑顔。でも目は真っ赤で…… 

「本気で好きやった…」 
崩れかけた笑顔でそう言った愛ちゃんが背を向けた。 
「ヤダ!」って言った私の声は、強くなった雨音に掻き消されて自分にも聞えなかった。 

追おうとすれば、相手が自転車とはいえ捕まえられたかもしれない。 
だけど、愛ちゃんの背中が「来ないで」って言ってるように見えて足が動かなかった。 
煙る雨の中に溶けてくみたいなその背中は白昼夢みたいだった。 

エピソード]T-滴- (了) 
- Metamorphose 〜変態〜 (番外編05) -