「はい、これ。」 
「あ、アレね。ありがと。じゃ借りるね。」 
いつものように放課後の教室。そこで俺は紺野にひとつの包みを手渡した。 
その中に入っていたのは……そう、いわゆるアダルトビデオ。 
しかも無修正の裏モノと言われるやつだ。 
俺がそれを悪友から入手したことを知ると、紺野は自分も一度見てみたいから貸してくれと言ってきた。 
どうやら話には聞いて興味はあるのだが見たことはないらしい。 
そこで俺に頼んできたと言うわけだ。 

「ね、一緒に見ようか?」 
紺野が俺に言う。 
「は?どこで見るんだよ。」 
「あたしん家でいいじゃん。あ、なんならそっちん家行っだげてもいいよ。」 
「いいよ、俺それ見たし、それに今日はちょっと用事があるから。」 
後から考えるとすごくもったいないことをしたと思うが、その時の俺はそこまで考えていなかった。 
それに用事があったのも事実だ。 

「そっかー。用事あるんだー。」 
「悪いな。それに一緒に見てたらムラムラして紺野を襲うかもしれないぞ。」 
「あはは、そうだね。あたし襲われたら困るからやっぱり独りで見るね。」 
「ま、急がないからゆっくり返してくれればいいよ。」 
「いいの?これ……使うんじゃないの?」 
紺野はそう言って意地悪な微笑みを浮かべる。 
「使わねーよ。もう、いいだろそんなこと。」 
そう言って俺と紺野は別れた。 

「ありがと。」 
翌日、紺野が俺にビデオを返してきた。 
「あ、もういいの?」 
「うん。」 
「そう。」 
そう言って俺はビデオを鞄の中にしまおうとする。 

「感想どうだった?初めて見たんだろ。」 
「……なんかね……びっくりしちゃった。」 
「何が?」 
「だって……あんなことするんだよ。」 
「あんなことってなんだよ。」 
「その……くわえたりとか……ほんとにするんだ……」 
「あれはビデオの中だけだろ。」 
「そっかな。」 
「そうだよ…多分。俺の友達たちだってしたことないって言ってたし。」 
「そっか…そうよね。あたしの周りだってしてるって聞いたことないもんね。」 
「だろ?だから実際にはあんなことしないんだよ。……まあゼロってわけじゃないだろうけど……」 
「それに……あそこってあんな形してるんだって初めてわかった……」 
「あそこって?」 
「その…女の人の……」 
紺野が言いよどむ。 

「なんだ?紺野って自分の見たことなかったの?」 
俺が何気なくそう言うと紺野は 
「もう、あるわけないじゃない。」 
と少し顔を赤くした。 
「ふーん、そうなんだ。女の子って自分の見ないんだ。」 
「そりゃ男の子みたいに外から見えないもん。自分で見ようとしない限り見ないよ、普通。」 
紺野が言う。 
「じゃ、紺野もいっぺん自分の見てみたら。人によって違うという話らしいし。」 
なんか俺すごいこと言ってるな……とは思うが、紺野は気づかないのか気にしてないのかそれに食いついてくる。 
「どうやって見るのよ。見えないのに。」 
「そりゃ…鏡に映して見るとか携帯で撮って見るとかいろいろあるだろ。」 
「そっか。そだね。じゃ、試してみようかな。ありがと。」 
そう言うと紺野は教室を出て行った。 

その翌日、紺野が俺に話しかけてくる。 
「教えてくれてありがと。昨日さっそく携帯で撮って見ちゃった。」 
何を?とかどうだった?とか感想は?とか聞いてみたかったがさすがに聞けるわけがない。 
「あ、そう。」 
俺はそう言葉を濁すのがやっとだった。 
「それでね、はい、これプレゼント。」 
紺野はそう言うと1枚のフロッピーを俺に手渡した。 
「何これ?」 
「昨日やりかた教えてくれたお礼よ。携帯で撮ったの。帰ってから見てね。 
でも誰にも見せちゃダメだよ。それから見たらすぐ消してね。」 

……ひょっとして……まさか紺野の…… 

その日、俺は家に帰ると大急ぎでパソコンの電源を入れ、紺野にもらったフロッピーを突っ込む。 
少し指が震えているのが自分でもわかる。 
パソコンが立ち上がる時間すらももどかしかった。 

そして…俺が見た紺野からもらったフロッピーに入っていた画像は、 
「何を期待してたの?このスケベ」 
と書いた紙を持った紺野の、もちろん服を着た上半身の姿だった……