紺野を部屋に誘う約束こそしたものの、いつにするか俺はまだ決めかねていた。 
俺の親は共働きではあるが、いつもはそんなに帰るのは遅くならない。 
俺としてはできるだけ長く……いや、欲を言えば朝まで紺野と一緒にいたい。 
単に紺野を遊びに来させるために俺の部屋に誘うだけなら親がいても全然構わないのだが、 
その目的、そしてそこですることを考えるとさすがに親がいるのはまずい。 
終わった後に親と顔を合わせるのもなんとなく気まずいし、ましてや行為の最中に帰って来られたら目も当てられない。 
それに、今の俺と紺野の関係を知られることに少し後ろめたい気持ちもあった。 
もし、ちゃんとした彼氏彼女だったら、堂々と紹介できるのに…… 
そんなことも思う。 
だから紺野を誘うのは両親が帰るのが遅いことがわかっている日…… 
できればその日はどこかに出かけていて帰らない日が望ましい。 
そんなこんなで俺はタイミングを図りかねていた。 


俺としてはできるだけ早く紺野を誘いたい……いや、したい。 
その時の俺は、どういうわけか3回目は俺の部屋で……と決めていた。 
それは紺野が自分の部屋へ俺を誘ってくれたことへのお返し……いや、むしろ俺が先に部屋に誘うべきだったのでは…… 
その時はそんな下心満々の誘いをすることに抵抗感と後ろめたさがあったが、 
今となってみれば先に紺野に誘わせてしまったことに少し罪悪感を覚えていた。 
でも……それも結果論なんだよな……ずるいな、俺…… 
そんな自己嫌悪にも陥る。 

とはいうものの、そんなにうまく親がいなくなることは考えられないし、かといって誘うのは早くしたい。 
でないと俺の高ぶった気持ちが収まらないし、紺野だって醒めて忘れてしまうかもしれない。 
できるものなら明日にでも紺野を部屋に迎えたい。 
そんな時…… 


「じゃ、行ってくるから。ちゃんと留守番してね。」 
その週の金曜の朝、母親が俺に言った。 
聞けば親父の恩師が急に亡くなってその葬儀に出るそうだ。 
その人は両親の仲人でもあったので、母親も一緒に出席し、ついでにその近くの観光もしてくるらしい。 
俺にとっては願ってもない展開だった。 
よく福引で当たって急に……とかはマンガなんかで見かけるが、まさか自分がその立場になるとは思ってもみなかった。 
故人には悪いが、よくぞこのタイミングで亡くなってくれました、って感じだ。 
これで堂々と……俺は喜び勇んで学校へ行った。 

休憩時間に紺野をつかまえて、他の人間に目立たないように連れ出す。 
俺と紺野の関係はまだクラスの誰も知らない。 
というか二人だけの秘密だ。 
俺は紺野とその秘密を共有していることにささやかな満足を感じていた。 

「あの……さ……今日両親いないんだけど、俺の家に来ない?」 
俺はそう言って紺野を誘った。 
当然OKしてもらえる、俺の胸は高鳴った。 


「……ごめん。今日はムリ。」 
紺野は顔の前で両手を合わせると、俺にそう言った。 
「……そうか……急だもんな……仕方ないよな……」 
俺は半ば呆然としながらそれだけ言うのが精一杯だった。 
聞けば今日の夕方から寺田たちと遊びに行くらしい。 
寺田というのは俺のクラスメートの男だ。 
だが俺とは派閥…というかグループが違うのであまりつきあいがない。 
もちろん、別に対立しているわけではないので機会があればそれなりの会話はするが、つるんで遊ぶとかそういうことはなかった。 
その寺田……のグループが最近紺野たちによく声をかけているのを目にする。 
どう見ても紺野を狙っているように見える。 
それは……紺野がここ最近垢抜けてきれいになった、というか色っぽくなったというのがもっぱらの噂だったからだ。 
もちろん、以前からその愛らしい表情や仕草で時折男子たちの話題に上がることはあったが、到底今ほどではなかった。 
紺野がきれいになった………その原因の一つに俺があるかも、 
ということは俺にとっては鼻が高いことではあったがまさかその理由を口にするわけにはいかない。 


「あ、そしたらA君もいっしょにくる?なんならあたしから寺田君たちに言ってあげようか。」 
「……いいよ……別に。」 
紺野はそう言ってくれるが、ここで俺が寺田たちのグループに加わったら極めて不自然だ。 
それこそ女目当てだということがあからさまにわかってしまう。 
さすがにそれは格好が悪いし、誰が目当てなんだと痛くもない腹を探られかねない。 
ましてや紺野に仲立ちしてもらって仲間に加わったりしたら…… 
かといって俺には紺野を止める権利なんてない。 
自分の彼女ですら遊びに行くのを止めることなんてできないのに、 
ましてや俺が紺野にそんな束縛をするのはまったく筋違いだし理不尽だ。 
「わかったよ。じゃまた今度誘うってことでいいかな。」 
「うん。待ってるね。」 
紺野はそう言うとまた教室に戻って行った。 


その日の晩、俺は一人自分の部屋で過ごしていた。 
両親もいない、この家に俺一人。 
コンビニで弁当を買って食い、風呂に入ってテレビを見る。 
つい今朝方までは 紺野をこの部屋に呼ぶ、と期待をふくらませていただけに余計にわびしさがつのる。 
紺野は今、寺田たちと楽しくやってるんだろうな…… 
寺田に対してそんな羨望を感じる。 
少し早いけどそろそろ寝るか…… 
そう思った時、俺の携帯が鳴った。 
誰だよ……Bか?それともCか?何の用だ…… 
「……もしもし。」 
俺がめんどくさそうに携帯に出ると 
「もしもし。あたし紺野。A君?……だよね。」 
と、紺野の声がした。 
俺はあわてて姿勢を正し、携帯を握りしめる。 
「うん、俺。なに?」 
自分でも動揺しているのがわかる。 
「……あのさ……これからそっち行っていい?」 
まさか。 
これから、こんな夜になって紺野が俺の家に来るっていうのか? 
ということはまさか……泊まるつもりか? 
俺は期待に胸が膨らみ、心なしか声も高まる。 
「うん、せっかく誘ってくれたのに悪いもん。あ……でもあたしA君の家って知らないから途中まで迎えに来てくれるかな?」 
俺は紺野と待ち合わせの場所を決めると、大急ぎでそこへ向かった。 

2丁目の角のコンビニ。 
そう、そこは俺と紺野が初めてしたときに待ち合わせに使った場所。 
それが誘蛾灯のように光を放っている。 
そしてそこにまた紺野はいた。 
「ごめん、待った?」 
「ううん、今来たとこ。早かったね。」 
「まあな。女の子待たしちゃ悪いと思って。」 
いつかと同じ言葉を交わして俺たちはそこを出る。 
こんどの行き先はホテルではなく、俺の家。 
俺と紺野は並んで歩き、やがてどちらともかく手をつなぎだした。 
「その……寺田たちと……どうだった?」 
俺は夕方から気になっていたことを紺野にぶつける。 
「うん。楽しかったよ。ボーリング行って、カラオケ行ってごはん食べて……それからゲーセンとか行って 
……もっと遅くなるかと思ってたんだけど意外に早く解散しちゃったから。」 
「誰がいたの?」 
「女の子はあたしと愛ちゃんと、まことと里沙ちゃんの4人かな。男の子は寺田君とはたけさんと……」 
「ふーん。そっかー。」 
俺がまだしたことのない紺野とのデート。 
それを寺田は……いや、グループ同士だからデートじゃなくて合コンだよな…… 
それでも俺はまだ紺野と遊びに行ったことなんてないのに…… 
俺がそんなことを考えていたら 
「あ、ひょっとして妬いてる?」 
と、唐突に紺野が言った。 
図星をつかれた俺は少し慌てたが 
「え……いや、別に。良かったじゃない。楽しかったみたいでさ。」 
と、なるべく感情を出さないように答えた。 

俺と紺野が家に向かって並んで歩く。 
ふと俺は紺野の持っているバッグに気がついた。 
「……なに?それ。」 
俺が聞くと紺野は 
「あ、これ?お泊まりセット。だって今日泊めてくれるんでしょ?」 
と屈託なく答えた。 
「本当は今日は愛ちゃんのところでお泊まり会する予定だったんだけど、愛ちゃん都合悪くなっちゃって。 
まことや里沙ちゃんもそれなら、ってことで自分ち帰っちゃった。」 
「……そう………」 
「……それで……あたし家には愛ちゃんのところに泊まるって言ってきてたから…… 
そしたら……A君が誘ってくれてたなっ、て思い出して………」 
まるで弁解するように次第に声が小さくなる。 
やっぱり男の部屋に泊まるということに少し抵抗……というか後ろめたさがあるのかもしれない。 
「……ありがと。思い出してくれてさ。」 

「こんばんはー。お邪魔しまーす。」 
誰もいない室内に向かって紺野が挨拶をする。 
「さ……あがって。」 
「うん。」 
「あ……俺の部屋こっちだから。」 
階段を昇り、紺野を俺の部屋に迎える。 
「へー、ここがA君の部屋なんだ。結構片づいてるね。」 
紺野は俺の部屋に入り、中をひとしきり見渡すと言った。 
「あ……いや、普段はもっと散らかってるんだけど……」 
「……あ、やっぱり。」 
そう言ってにやりと笑う。 
「なんだよ…それ。」 
「ううん、別に。」 
なんとなくまったりとした空気が流れる。 
それが少し心地よい。 
「あ、今なんか飲むものもってこようか。」 
俺が言うと紺野は 
「うん、ありがと。」 
と微笑んだ。 

ジュースを持って俺が部屋に戻ると、なにやらごそごそと物音がする。 
よく見ると紺野が俺の部屋をあちこちかき探していた。 
「あーっ、何してんだよ!」 
「あ、えっちな本とかないかなーとか思って。」 
屈託なく紺野が答える。 
「だって男の子ってえっちな本とかいろいろ隠してるんでしょ。聞いたよ。」 
「どこでこそんな話聞いたんだよ。」 
「え?違うの?」 
「……いや……それは……」 
確かに、実は俺もその手の本ぐらいは持っていて押し入れに隠している。 
いつ親に部屋に踏み込まれて見つけられるかわからないからだ。 
だが、部屋に呼んだ女の子に見つけられるのは親のそれより恥ずかしい。 
「あーっ、やっぱり隠してるんだー。」 
俺が口ごもったのを見て、紺野がうれしそうに言った。 
「……別に……いいだろ。その……俺だって男なんだから……」 
俺はそう言うのが精一杯だった。 

ジュースを飲んでからも紺野はなおもしげしげと俺の部屋の中を見渡している。 
まるで初めて来た博物館で珍しい展示物でも見ているようだった。 
「……なんか……そんな珍しいものでもあるのか?別に普通の部屋のはずだけど……」 
「だって……男の子の部屋来たのなんて初めてだし……あたしの部屋とか愛ちゃんの…… 
ううん、あたしの知ってる女の子の部屋とは全然違うんだなーって……」 
紺野が言う。 
俺もこの前感じたが、確かに俺の部屋と紺野の部屋とは全然違う。 
机や本棚やベッドなどの調度品は同じようなもので、違っているものといえば全身鏡ぐらいなのかもしれないが、 
それよりもっと……部屋の醸し出す雰囲気などが違っていた。 
俺が紺野の部屋で感じたのは、そこがまさに女の子の部屋だということ。 
部屋全体に満ちている紺野の……女の子の香り。 
多分、この部屋にまったく同じ調度品があったとしてもあの部屋みたいには決してならないだろう。 
それを今、同じように紺野も感じているのかもしれない。 
「なんか……あの時A君が言ったことわかったような気がする……」 
「……え?」 
「だって……この部屋入っただけで……A君のことがわかった気がするもん……」 
紺野はそう言った。 

紺野はそのまま俺の部屋で座って部屋の中をあちこち眺めていたが、やがて 
「……ね……シャワー貸りてもいいかな?」 
と言ってきた。 
「……ん……いいよ。あ、まだお湯張ってあるから湯船も使ってもらって…… 
いや、単に明日も使おうと思ってただけなんだけどさ。」 
「ありがと。じゃ借りるね。えと…場所は……」 
紺野はそう言うとバッグを持って階段を降りようとする。 
その降り際に 
「ね、いっしょに入ろうか?」 
と少し言ってきた。 
「……え?……え?」 
いきなりのその言葉に動揺する俺。 
まさか……いや…確かに……紺野と一緒に入りたい……そして……いろいろ…… 
俺が口ごもっていると、紺野はそんな俺の内心を見透かすかのように 
「……なーんてね。まだちょっと恥ずかしいから……それはまた今度ね。」 
と少し顔を赤らめ、手を振りながら言った。 
………びっくりした……… 
ベッドにもたれながら俺は自分の胸に手をやった…… 

女の子の風呂は長い。 
俺はしばらく部屋でぼーっと待っていたが、気になって階段を降りていく。 
それも忍び足だ。 
一段一段降りるごとに、水音が大きくなる。 
俺はそっと階段を降りると足音を立てないように風呂場へ近づいてゆき、扉の側にやってきた。 
扉の向こう側では紺野が風呂を使う音、そして時折紺野の鼻唄が聞こえる。 
足元に目をやると、紺野が持ってきたバッグが置いてあった。 
バッグの上にはいま紺野が今脱いだ衣服がかけてある。 
さすがに下着はない。おそらく一緒に持って入ったんだろう。 
下着を洗濯機ではなく手洗いする女の子も結構いるそうだから、あるいは紺野もそのクチかもしれない。 
バッグの口が少し開いていて、中からパジャマと……おそらくこれから身につける下着が顔を見せていた。 
……紺野……これ着るんだ…… 
そう想像するだけで俺は興奮してきた。 

その後の俺だったらそこで躊躇することなく着ているものを脱いで風呂に乱入していただろうが、 
その時はまだそうする勇気も度胸もなかった。 
今から思えば純でかわいいもんだ。 


その時、俺の気配に気づいたのか中の水音が止まり、 
「いるの?」 
と紺野が声をかけてきた。 

やばい!戻らないと! 

俺は心臓が飛び出しそうになるぐらい仰天するとあわてて足音を立てないように部屋に戻る。 

………びっくりした……… 

部屋に戻ってしばらくの間も、俺の心臓はバクバクと高鳴っていた…… 

結局俺はそのまま部屋で紺野が風呂から上がるのをおとなしく待つことにした。 
ベッドにもたれ、TVをつける。 
他人の家と違ってそのへんは気をつかうことがないから気が楽だ。 
そうしてしばらくTVを見ているうち、階段を上がってくる足音がして紺野が部屋に戻ってきた。 
手にはバッグ、そこに家に来た時の衣服がひっかけている。 
そして紺野本人は……さっきバッグからちらっと見えたパジャマを着ていた。 
湯上がりの石鹸の香りを漂わせる紺野はとてもかわいく、艶っぽい。 
完全に乾ききっていない濡れた髪がますますそれを際立たせる。 
今にも抱きしめたく……いや、押し倒したくなってしまう。 
紺野はバッグを部屋の隅に置くと、 
「さっきお風呂覗こうとしたでしょ。」 
と、意地悪な微笑みを浮かべながら俺に言った。 

………ばれてるよ……おい…… 

俺は焦る。 
「……え……いや……その……」 
どう言い訳しようかしどろもどろになっていると紺野は 
「……もう……エッチなんだから……」 
とたしなめるように俺に言った。そして続けるように 
「……別に……入ってきてもよかったのに………」 
と呟いたのが聞こえたのは俺の気のせいか…… 

紺野は俺の隣に並んで座り、しばらく一緒にTVを見る。 
再び部屋の中にまったりとした空気が流れる。 
紺野は時々画面に突っ込みを入れて俺の感想を求めたりする。 
俺は適当に相槌を打つ。 
やがて……自然に俺の右手が伸びて紺野の肩を抱くと、その身体を俺のほうに引き寄せた。 
紺野も俺の肩に自分の頭を乗せ、身体を俺にもたれかからせる。 
そして時折安堵ともいえるような吐息を吐く。 
俺にとっては至福の時間。 
こうしている時だけは恋人同士になれた気分だ。 
このまま時が止まればいいのに…… 
そんなことを思う。 

すると紺野は 
「ね、なにかビデオかなんかない?」 
と、唐突に言ってきた。 

……は……なんだよ、一体…… 

当の本人から雰囲気を壊されて俺は少し不機嫌な顔になる。 
やっぱり恋人とかそういうのはノーサンキューなのかな…… 
それで自分からムードを打ち消したんだ…… 
そう思うと少し悲しくなった。 

……仕方ないか……紺野がそう思ってるんなら…… 

俺はそう気持ちを切り換えることにした。 

「ビデオって……どんなのさ。あんまり大したのないし……紺野の趣味に合うかどうか……」 
「ね、アレある?アレ見ようよ。」 
「アレって?」 
「その……A君があたしに貸してくれたやつ。」 
アレって……いつかの裏ビデオか? 
またなんで………それに紺野もダビングして見てるって…… 
「ね、一緒に見ようよ。あたしA君と一緒に見たいな……」 
紺野が再び俺のほうを見て言う。 
その大きな瞳で見つめられると俺は断れない。 
まったく……天使なんだか小悪魔なんだか…… 

俺は机の引き出しを開けて隠してあったビデオを取り出すとデッキに入れる。 
「……やっぱり隠してるんだ。」 
紺野がめざとく言った。 
……いいだろ……親に見つかりでもしたら困るんだよ……… 

それまで流れていたTV番組が消え、画面からはアダルトビデオの映像が流れ出した。 
絡み合う男と女。 
紺野はそれを見て 
「わー、すごーい。」 
「あー、あんなことしてるー。」 
「やだー。ほんとにしてるよー。」 
「あ、くわえたー。」 
と、大きなほっぺたを手で包みながら声を上げた。 

……おいおい……自分だって何度も見てるんだろうに……それに……その……処女じゃないんだろ…… 

そう突っ込みたくなったが、自分がするのと他人のを見るのとでは違うのかもしれない。 
それに他人の行為を見ることで自分の記憶がよみがえるのかも…… 

興奮してはしゃいでる紺野を見て俺はそう思う。 
とはいうものの、俺も画面の映像と紺野から漂う香りでさっきから興奮が高まって仕方がない。 
あとはもういつ、というタイミングだけだ。 

とうとう画像の中の男女が交わりを始める。 
紺野は 
「もう…やだっ。恥ずかしいっ。あたしもう寝るね。おやすみ。」 
と赤くなった顔を手でぱたぱた扇ぐとベッドに昇り、布団をかぶってしまった。 

……おいおい、それは俺の…… 

「へへー、お布団取っちゃったー。」 
紺野は布団から顔だけ覗かせ、舌をぺろっと出して悪戯っぽく微笑むと再び布団をかぶって隠れる。 
「あっ、このやろ。」 
その微笑みに釣られるかのように俺も紺野を追うような形でベッドに昇り、布団の上から紺野にまたがるような形になる。 
「やだぁ!やだぁ!やだよぉー!」 
紺野は笑いながら布団の中で暴れて俺に抵抗してくる。 
まるで子犬がじゃれあっているような俺と紺野。 

そして、抵抗する紺野を抑えて布団をめくると、真っ赤な顔をして息を弾ませ、少し目を潤ませた紺野の顔が現れた…… 
「あはは…めくられちゃった……やっぱり男の子にはかなわないな…」 

互いに見つめ合う俺たち。 
そして……紺野はゆっくりと両手を俺の首に回した…… 

俺はその状態のまま身体を降ろし、紺野に覆いかぶさる。 
「……電気……消すよ……」 
そして……唇が触れ合う…… 

もう日付も変わった深夜の俺の部屋。 
その俺のベッドの上で俺と紺野は身体を重ねていた。 
電気も消し、街灯の光のごく一部だけが部屋に差し込む。 
その暗さの中でごそごそと蠢く二つの身体。 
そして……それはやがて一つに結ばれようとしていた…… 

唇を重ねたままパジャマのボタンを外し、下着越しに胸を撫でる。 
そのまま袖を抜いて上半身を下着だけにする。 
腕を背中に回してホックを外し、ブラを取ってその豊かな乳房を露出させる。 
右手を紺野の下半身に回し、紺野の大切なところを愛撫しながらパジャマとパンツを脱がせて生まれたままの姿にした。 
俺もそれに合わせるかのように着ているものを脱いで裸になる。 

……うんっ……んんっ……んっ……ふうっ…… 

紺野はそのたびに吐息を吐き、そしてそれは徐々に喘ぎ声へと変わってゆく。 
その大切な女の子の部分からはえっちな液が染み出して止まることを知らない。 
その液体は俺が右手でそこを刺激するたびに、くちゅくちゅと湿った音をたてて指に絡みつく。 

……ふうっ……あふっ……んんっ……ふうっ…… 

そのたび吐き出される紺野の甘い吐息、そして喘ぎ声。 
もうすっかり快感に包まれていることは明らかだ。 

……もっと……もっと紺野を気持ちよくしてやりたい……できるなら……イカせてやりたい…… 

最初に紺野とした時、そしてその次も俺は自分のことでいっぱいいっぱいだったが 
さすがに三度目ともなるとそんな余裕もできてくる。 

……俺と紺野……まだ恋人じゃないけどせめて今この時ぐらいは…… 

そう思い、自分の気持ちをぶつけるように俺は愛撫を続ける。 
「……気持ちいい……?」 
俺が聞くと紺野はこくんと頷いた。 
暗くて顔はよく見えないが、その大きな瞳は涙で潤んでいるのがわかる。 
「……ね……」 
「……なに……?」 
「……その……舐めて…ほしい……」 
紺野は小さくそう言うと、たぶん恥ずかしかったのだろう、両手で顔を覆って横を向いた…… 

俺はそれを聞いた途端、しばらく絶句した。 
聞いた俺のほうが恥ずかしくなってくるような紺野のその言葉。 
だが逆にそれはますます俺の欲望を刺激する。 

……紺野が……おねだり…… 

紺野が自分の性欲をカムアウトしたのはこの前の時と同じだ。 
だが、今日はそれ以上に自分の欲望を正直に俺にぶつけてきている。 
俺は……そんな紺野がこれ以上ないほどにいとおしく感じられた。 

紺野はまだ両手で顔を覆って羞恥に耐えている。 
俺は自分の身体を上にずらすと、両手で紺野の両の手首をつかみ、ゆっくりと広げる。 
再び俺の前に現れる紺野の顔。 
だが紺野はまだ恥ずかしいのかまた横を向く。 
「……紺野……」 
俺は紺野にそっと囁きかける。 
だが紺野は横を向いたまま 
「……やだ……恥ずかしい………」 
と、それこそ蚊の鳴くような声で答え、また手で顔を覆った…… 

俺は両手で紺野の身体を上から抱き抱えるようにすると、その髪を何度も何度も撫でる。 
乾いたばかりの……ほんのりとシャンプーの香りのする髪。 
元々くせ毛だとは言ってはいたが、今俺の前にある紺野の髪はさらさらで柔らかい。 

そして俺は再び……頭を下げると紺野の乳房に……そしてその先端の乳首に舌を這わせた。 

……ひゃああっっ……… 

その刺激に紺野は一瞬声をあげ、顔を覆っていた両手を離して俺の頭を掴む。 
俺はしばらく舌と唇で紺野の乳首を転がすと、徐々に頭を下半身のほうに移動させてゆく。 
乳首から乳房、脇腹からへそへと動き、その都度紺野の白い肌に唇で印をつける。 
それに合わせて腕は肩から背中へ、そして腰へと下がる。 

……ふあっ……ふうっ……ふあっ……ううっ…… 

そのたびに紺野の口からは甘い喘ぎ声が漏れてくる。 

そして……俺は紺野の太ももを抱えて足を上に向けると、その中心に顔を近づけた。 
俺の間近にある紺野の女の子そのもの…… 
そこは……少しチーズのような臭いがした…… 

今、俺のすぐ目の前に紺野の大切な部分がある。 
俺しか知らない、だが俺もはっきりとはみたことがない紺野のそこ。 
それがほんの数センチの間隔で俺の目前にあった。 
そこはチーズのような少し刺激のある臭いを放っている。 
だがそれは決して不快なものではなく、より一層俺を興奮させる紺野のメスの匂い…・・いや、フェロモンそのもの。 
紺野はその一番恥ずかしいところを俺の前に晒している。 
眼前にありながら暗くてはっきりとは見えないのが残念だったが、それでも 
そこは中央に縦に溝があり、その左右に羽のように襞があるのがわかる。 
溝の先端には皮をかぶった丸い突起のようなもの。 
そしてその襞の中は、おそらく紺野の体内から染み出した液体で満たされているに違いなかった。 

「……恥ずかしいぃぃ……見ないで………」 

再び手で顔を覆い、紺野が蚊の鳴くような声で俺に言う。 

……おいおい……舐めてくれって言ったのは紺野だろ……見なくちゃ舐められないだろ…… 
それに……第一暗くてよく見えないし…… 

そうは思うものの、舐めて欲しいけど恥ずかしくて見られたくないという紺野の心境も多少は理解できる。 
紺野自身も今、欲望と羞恥の間の葛藤にさいなまれているに違いなかった。 
そんなところがまたかわいく思える。 

俺は紺野のその部分めがけてふっと息を吹きかける。 
その刹那、紺野の身体がぴくりと反応する。 

そして、俺は両方の親指でその突起を包んでいる皮をやさしく剥くと、そこに舌を触れさせた…… 

…………ふううううううううっっっっ………… 

紺野がひときわ大きな声を出した。 
それは一瞬だったが、俺を驚かせ、さらには外に聞こえるんじゃないかと心配してしまうぐらいの大きさだった。 

「………紺野………」 
「……ごめ……ん……うう……恥ずか…し…い……」 

思いがけず声を上げてしまったことで、一層の羞恥が紺野を包んだようだ。 

「……いいよ。気にしなくて……」 
俺は紺野にそう言った。 
とはいうものの、外に聞こえたらまずいよな、 
俺はそう思った…… 

俺は再び紺野のそこを広げ、真珠のような突起、そして襞からその内側に舌を這わせてゆく。 

……はあっ……ふあっ……はああっっ……ふああっっ……はあっ…… 

紺野はさっき以上に荒い息を吐き、快感に喘ぐ。 
襞の内側の中心からは、俺の舌の動きに合わせるかのようにあとからあとから紺野の体液が湧き出してくる。 
まるで汲めども汲めどもつきない泉。 
ぴちぴちゃ、くちゃくちゃと湿った音が俺の口元でしている。 
猫がミルクを飲むように……いや、熊が蜂蜜を舐めるように俺は舌を動かして紺野の蜜を舐める。 

……はあっ…・はあっっ…ふううんんっ……はああっっ……ふあっ……はあっ…… 

紺野はそのたび、ある時はシーツを掴み、またある時は俺の頭を持って身体を捩り、悶えている。 
……そう……まるでさっき見たビデオの中の女優のように…… 

紺野がこんなに乱れるなんて…… 

……俺はふと、そんな感慨を抱く…… 

紺野は俺の愛撫によって快感を得、快楽に溺れている。 
このままイカせてやりたい…… 
俺はそう思い、なおも舌で紺野のそこを刺激する。 
心なしか紺野から染み出す蜜は、しだいに粘りを帯びてくる気がする。 

……はあっ……ふああっ……ふあっ……はああっ…んんっっ…… 

呼吸するのに合わせて漏れ続ける紺野の喘ぎ声。 
そのリズムが次第に早くなり、やがて…… 
ぴくんぴくんと身体を小刻みに痙攣させて紺野の力が抜けた…… 

「少し……イっちゃった……」 
しばらくして落ち着くと、紺野が大きな瞳を潤ませて俺に言った。 
「……そう……良かった……」 
俺はまた身体をずり上げ、紺野を抱えるようにして髪を撫でる。 
それから唇を重ね、再び舌を絡め合う。 

…ちゅっ……ちゅっ……ちゅっ…… 

互いの唾液を交換し合いながら俺は右手で紺野の両足を順に外に開いて自分の身体を割り込ませる。 
そして……俺は紺野に挿入を開始した……… 

その夜……俺と紺野は終わった後もしばらくそのまま布団にくるまっていた。 
互いになにも身につけていない、生まれたままの姿。 
俺の右腕の上には紺野の頭……腕枕の状態だ。 

「……えへへ……」 
俺の腕の上で紺野が微笑む。 
「……やっぱりえっちだね、あたしたち。」 
「……そうだな……まさか紺野があんなこと言うなんて思わなかったよ。」 
俺が少し意地悪っぽく紺野に言う。 
「もう……やだっ……」 
紺野はそう言うと俺の脇腹をつねった。 
「……い、痛いだろ。」 
「えへへ……ごめん。」 
そう言って紺野はぺろっと舌を出す。 
俺と紺野。 
身体を重ねているときだけは恋人同士だ。 
俺にとってはしばしの間の至福の時。 
幸いにも今日は朝まで一緒にいることができる。 
次にいつこんな機会があるかわからないぶん、今このひとときを大切にしないと…… 
そんなことを思う。 

「……でも……してもらってうれしかった……」 
紺野が言う。 
「ん?なんで?」 
「……だって……もしかしたら嫌がってしてくれないかも、って……汚いし……」 
「……汚くないさ。紺野のだから……」 

……そう……紺野の一番大切なところだから可愛くていとしくはあっても汚いことなんかない…… 
それに……紺野が俺にそういうおねだりをしてくること自体が俺にはうれしかった。 

「……それで……良かった?」 
俺は紺野に聞いてみる。 
「……うん……とっても良かった……」 
紺野はそう言って俺のほうに頭を寄せてくる。 
「……でも……中でイケたらもっといいんだって……なんかの本に書いてあった……」 
「……………」 
「……あ、ごめん。そういう意味じゃないんだけど……まだちょっと痛いし……でもそれだけじゃなくなってきたよ。」 
「……そう……」 
単に気を遣っているだけなのかもしれないが、とりあえず俺の前後運動が否定されたわけではなかったので安堵した。 

「あたしがもっと馴れて馴染んだら中でもイケるかな?」 
俺はどう答えようか迷ったが 
「……そうだな……紺野がイケるように俺……もっと頑張らないとな……」 
と言った。 
それは、これからも紺野と、という俺からのせめてもの意思表示。 
紺野はそれに気づいたのかどうか 
「……うん。そのうちきっとイケるよね。だから二人で頑張ろうね。」 
と俺に言った。 

「せっかくパジャマ持ってきたのにいらなかったね。すぐ脱がされちゃって。」 
紺野が言う。 
確かに、夜遅くに俺の家に来たこと自体そのつもりだったのだろうが、あからさまにそう言われては返事のしようがない。 
「いいじゃん、別に。そういうこともあるってことで。」 
「えへへ。そうだね。じゃ朝までこのままでいよっか。」 
紺野はそう言って身体を俺に寄せてくる。 
俺の胸に触れる紺野の乳房。 
そしてその先端の突起の感触が俺の興奮を刺激して、ついさっき出したばかりだというのに俺の分身は再び回復しつつあった。 
その先っぽがちょうど紺野の腹にあたる。 

「……あの…さっきからお腹になにか当たってるんですけど?」 
紺野が上目遣いに俺に言う。 
「……仕方ないだろ……さっきから紺野の胸が……その……当たって……」 
「もう……あたしのせい?」 
そう言って俺と紺野は顔を見合わせて うふふ と笑った。 

「やっぱりあたしたちえっちだね。」 
「……そう?……そうかもな……」 
「うん。えっちだよ……だから……2回目……しよっか……」 

紺野がそう言うと、俺たちは再び唇を重ねた…… 

やがて、夜が明けて朝がやってきた。 
結局俺たちはもう一度、さらにその後にももう一度身体を重ね、求め合った。 
我ながら元気……いや、相手が紺野だからこそ元気になれるのだろう。 
現実にはあり得ないだろうが、紺野が相手だったら俺は限界などないんじゃないか……本気でそう思う。 
その紺野は俺の隣で寝息を立てている。 
橋や小川はともかく、家族以外の男では俺しか知らない紺野の寝顔。 
眠っている時に時々目を開けたり唸り声を上げたりするのには正直驚いたが……まあそれも愛嬌のうちだ。 
そして漂ってくる少し汗の混じった紺野の匂い。 
少し早く目覚めた俺は上体を起こし、しばらく紺野のその寝顔を見つめていた。 
時折そのくしゃくしゃになった髪を撫でてやる。 
紺野が……俺の彼女だったら…… 
もう何度そんなことを思っただろう。 
そして何回それを言おうとしただろう。 
だが、肝心なところで感じる紺野からのメッセージ。 

勘違いしないで。あたしたち仲はいいけど友達じゃない。 
確かに身体の関係はあるけど、それはお互いにえっちだからでそれ以上じゃないわ。 

もし、俺が口に出して紺野にそう返されたなら、俺はもう立ち直れない。 
そして間違いなく今の関係も終わりを告げるだろう。 
俺はそれが怖かった。 
だから……いや……でも……言わなくちゃ…… 
俺の心に葛藤が生まれる。 

「……ん………ううーーん……」 
やがて小さな唸り声とともに、紺野が目を覚ます。 
「……ん……あ……おはよ……」 
寝ぼけ眼で俺を見て紺野が言う。 
「……あ……おはよう……」 
「……………きゃっ!」 
紺野はしばらく布団の中でゴソゴソしていたが、自分が裸のまま寝てそのままだということに気がつくと急に飛び起き、 
あわててベッドの下にあった下着とバッグに引っかけていた服を身につけた。 
「もう!恥ずかしいからこっち見ないで!絶対こっち向いちゃダメだからね!」 
そう言って俺を叱る。 

……おいおい……今の今まで裸で一緒に寝てたのに……それに俺に一番恥ずかしいところ見られ…… 
いや、はっきりとは見えてないけど同じだよな……そのうえ舐められたりもしたのに…… 

この間と同じことを思う。 
ま、女の子にとっては全然違うのかもしれないが、少なくとも俺には理解できない。 
とりあえず俺だけ裸でいるわけにもいかないので紺野に合わせて俺も服を着る。 

「あー、髪ボサボサ。ごめん、ちょっと洗面所借りるね。」 
紺野はそう言うとバッグから洗面セットを取り出すとあわてて階段を駆け降りていった。 

なんかあわただしいな……普段学校で見てる紺野とは違うな…… 

ひょっとしたらこれが紺野の普段着の姿なのかも…… 
だがそんな紺野の素の一面を見れたことだけでも俺はうれしかった。 
それだけ俺に気を許しているということに他ならないからだ。 

怪談のしたからはなおもばたばたという音がする。 
時折「あーん、どうしようー。」という紺野の声。 
そんな音や声が聞こえるたび、俺は紺野のことがますますかわいく思えた。 

しばらくして落ち着いたのか再びとんとんと音がして紺野が階段を昇ってくる。 
これから紺野はどうする予定なんだろう。 
もし……何も予定がないのなら俺と一日……この部屋にいるのもいいけど一緒にどこかに出かけたりとか…… 
いや……その前にちゃんと言わなくちゃな…… 
さまざまな思いが頭の中をめぐる。 

紺野は俺の部屋に戻ってくると床にちょこんと座ると 
「なんか……3回もするとは思ってなかった……」 
と言うと、少し顔を赤らめて下を向いた。 
「ごめん……俺……止まらなくて……」 
「……いいよ……なんかね、あたしも充実した感じだし。ちょっと疲れちゃったけど……」 
紺野がそう言うと、しばらく沈黙が流れる。 

……今しかない…… 

「……あのさ……紺野……」 
そう思った俺は、紺野に話しかけた。 
「……なに?ひょっとしてこれからまたしたいの?」 
微笑みながら冗談混じりに言葉を返してくる紺野。 
「いや……そうじゃなくて……」 
「じゃあ…なに?」 
そんな紺野はきょとんとしつつ、その愛くるしい瞳で俺を見つめてくる。 
俺もその紺野の瞳を見つめ返す。 
互いに何も言わない。 
次第に二人の間の空気が重くなってゆく。 
「あのさ……俺……」 
意を決して俺がそう言いかけた時…… 
突然紺野が 
「あー、もうこんな時間―。たーいへーん。ゴメン、あたしもう帰るから。じゃ、また月曜学校でね。」 
とバッグを持って立ち上がった。 

聞けばこの後小川と買い物に行く約束をしているらしい。 
そのために一度家に戻るそうだ。 
別に……わざわざ一旦戻らなくてもここで時間までゆっくりしていけば。 
必要ならシャワーだって自由につかってもらえばいい。 
そう言うと 
「何言ってるの。昨日と同じ服着てその上同じバッグ持ってたら家に帰ってないってことバレちゃうじゃない。 
そしたらどこに泊まったんだっていう話になるし、何してたんだということになるもん。」 
と言い返された。 
「……まこっちゃんああ見えて結構細かいから絶対ごまかせないよ。」 

男同士と違って女の子は大変なんだな…… 
それに……俺たちのこと、まだ周りには秘密だしな…… 

結局紺野はそのまま慌ただしく家を出て行った。 
一人後に残される俺。 

……なんか…はぐらかされた…… 

やっぱり紺野は俺とのこと……身体だけのつきあいだと思っているのかも…… 

俺の胸に切なさと寂しさが漂う。 
いつか……紺野と心もつながる日が来るんだろうか…… 
それまではどこか割り切らなくちゃいけないんだろうか…… 

俺は、まるで蝉の抜け殻のように残されたベッドを見ながら大きなため息を一つついた。 

(了。)